北辰神櫻流の理合について

令和5(2023)年5月31日


名古屋支部 山本 和彦 教士
北辰神櫻流居合兵法

北辰神櫻流を修めて36年、居合について少しは話せるようになりましたが、それでも流派が違うと理解できないことも多々あります。逆にいえば、他流派の方々が北辰神櫻流の理合を理解することが難しいとも考えております。ゆえに、当流の理合の一部を紙面の限りご紹介させていただきます。

先代師匠菅沼敏博先生によれば居合は物理だ。さらには晩年、居合は1+1は2にならず目に見えぬものがあり居合は化学だともいわれた。何よりも姿勢が大事だぞ。自分の刀が相手に届くということは、相手の刀が自分に届くということでもある。日本刀は、剣先が触れれば斬れる。指先にでも小さな傷を負わせれば相手の戦意を削げる。相手を殺さずとも退かせればよい。北辰神櫻流の斬り方は剣先が20センチ伸びる。伸ばして伸ばしきらずだ。速度が遅くても遠くを斬ることを優先せよ。それで遅いというなら稽古で速くせよ。短い刀を長く使え、軽い刀を重く使え。柄は握るのではない、添えにいけ。抜きつけは相手を寄せ付けないバリアであるから左前方の角も斬れ。正面斬りは自分と相手の人中路へ刀を頭上で直立させてから斬り下ろせ。斬り下ろした刀は水平だぞ。正面斬りの足は前足後足とも正面(相手)に向けよ。足を横に開くと剣先が伸びなくなるから直線の上、道場の床板2枚の幅から出ずに動けなど。作法には特に厳しく、禮に始まり禮に終わる。散歩漫歩は厳に慎むべし。師匠に師匠あり、すなわち禮節の極意なり。

これがすべてではありませんが、当流理合と稽古眼目の一端をお伝えしました。


菅沼千代子五段(先代奥様)とともに。