支部長
日比 元晴
熊野支部は、三重県南部の熊野市にあります。熊野市は東に太平洋、西・南・北の三方を山に囲まれ、海岸沿いには国道42号線が走っています。市内を流れる井戸川は、洪水時以外は澄んだ流れを保ち、唱歌『ふるさと』の「ウサギ追いし彼の山」「小鮒釣りし彼の川」を思わせる風景が広がります(もっとも現在は鹿・猪・熊・猿が山を占領し、農家や家庭菜園に被害も出ていますが)。川には40cmを超える鯉も泳ぎ、太平洋は季節によって本物の「紺碧」と呼ぶにふさわしい色に染まります。夏は海水浴場に人が集まり、暖流系の魚介類が海中や岸辺を彩ります。
交通は都会ほど便利ではありませんが、日常生活に不便は少なく、我慢をすれば住みやすい土地です。わたしたちの活動拠点である熊野支部「創成館」道場は、令和7年に発足25年、道場改修から5年を迎えました。もとはスーパーマーケットの荷捌き場だった建物(約30m×20m)の一部(20m×10m)に畳130枚を直敷きして使っていましたが、5年前に畳の傷みが進んだため、桧板を使った畳床に改修しました。コンクリート土間に30cm間隔で桟を並べ桧板を張り、壁には腰板を貼り、仕切り壁や引き戸も新設。更衣室・シャワー室・トイレ・洗面所は既存設備を活用しています。
現在は幅広い年代の会員が在籍しており、その中でも安定して稽古に参加しているメンバーを中心に、無雙直傳英信流の修業に励んでいます。稽古日は土曜・日曜・祝日が基本ですが、自前の道場で多くの会員が30分以内に通えるため、自由稽古も可能で、ほぼ毎日通う剣士もいます。発足当時の会員は皆平等に歳を重ね、当時50代だった壮年剣士も今や70代半ば。若い世代の加入を目指して努力を続けていますが、道はまだ遠く、これからも次世代へ技と心を継承していくつもりです。